桃太郎の鬼退治伝説から漆黒の名城まで
岡山市内エリアの観光音声ガイド
岡山エリア紹介
岡山市は、中国地方において広島市に次ぐ人口を有する中核都市です。古くは吉備国が栄え、出雲やヤマトと並ぶ強力な地方国家でした。このため、北西部の吉備路地区には多くの古墳がみられます。
また、「桃太郎」発祥の地としても有名で、鬼退治伝説が残る吉備津神社をはじめ、神話にからめた古代の史跡は現代も人々を惹きつけてやみません。備前国の政治経済の中心として長く城下町を支えてきた岡山城は、今日でも岡山を象徴する存在です。
日本三名園のひとつ、岡山後楽園や、岡山出身の画家・竹久夢二の世界が広がる夢二郷土美術館も定番の観光スポット。羽柴秀吉、黒田官兵衛らによる水攻めで陥落した備中高松城(びっちゅうたかまつじょう)は、今では蓮の名所となっています。
ほかにも、「裸祭り」で知られる西大寺、江戸時代の町並みが残る足守地区、産業遺産を現代アートに転換させた犬島など、歴史と文化に裏打ちされた見所が多くあります。
岡山名産の白桃やマスカットといった高級フルーツをはじめ、えびめし、デミカツ丼といったグルメもぜひお試しください。
A 岡山城
B 岡山後楽園
C 夢二郷土美術館
D 西大寺観音院
E 最上稲荷(最上稲荷山妙教寺)
F 吉備津神社
G 犬島
H 招き猫美術館
I 岡山のグルメ
A
岡山城
おかやまじょう
岡山城は、戦国の世が終わりを迎えた時期の1597年、宇喜多秀家によって造られた城です。
天守閣の特徴は、不等辺五角形の天守台。1階は五角形で、これが上階にいくにつれて徐々に四角形に修正されているため、角度によっては変化に富んだ姿が非常にユニークな外観となっています。
また、黒塗りの下見板(したみいた)を張った外壁は大変美しく、今も「烏城(うじょう)」の別名で親しまれています。
注目すべき点は、その石垣です。
宇喜多、小早川、池田と城主が変わる中で、時代も戦国から江戸へ移行。このため、時代ごとに石垣の積み方に大きな違いが表れ、石垣造りの技術的な進化がよく見てとれます。
関ケ原合戦以前に造られたこの貴重な漆黒の天守も、第二次世界大戦では米軍の空襲により、焼失してしまいました。
現在の天守は、1966年に鉄筋コンクリートで復元したものです。現存する建造物は、江戸時代初期に建てられた月見櫓と、西の丸西手櫓のみとなっています。
B
岡山後楽園
おかやまこうらくえん
岡山後楽園は江戸時代の大名庭園で、巧みに計算された四季折々の景観が見所です。
特徴は、時の藩主によって大きく手が加えられている点。備前岡山藩第2代藩主である池田綱政は庭に「やすらぎの場」を求め、園内に幾つも設置した屋敷から眺望を楽しむ造りにしました。
綱政の息子・継政は、庭の中央に唯心山という小山を築き、ふもとに水路や池を配置することで、立体的な風景を造成。加えて田園風景を好み、田んぼや畑を多く設けました。その後、藩が財政難に陥り、経費節減のために田畑より維持費がかからない芝生が植えられます。芝生は岡山後楽園の特徴としてよく挙げられますが、田園の名残として、「井田」と呼ばれる正方形の田んぼも今に残されています。江戸の姿を留めるこの美しい庭園も、実は太平洋戦争中に空襲で多くの屋敷が焼失しました。園内の全ての建物が復元されたのは、1967年のことです。また、かつては野生のタンチョウが飛来していたという記録が残っており、今日に至っては研究員の手で大切に飼育されています。
C
夢二郷土美術館
ゆめじきょうどびじゅつかん
赤レンガ造りに風見鶏が目印の夢二郷土美術館。明治から大正にかけて活躍した岡山出身の詩人画家 竹久夢二の美術館です。
恋多き夢二が描く女性は、細くしなやかな身体に大きな瞳が特徴。「夢二式美人」「大正の浮世絵」と呼ばれることもあります。
一方、夢二は単なる画家ではなく、詩人でもあり、また現代でいうデザイナーでもありました。
文房具や日用品のデザインなどを手がけ、その商業美術のセンスは今日でも愛されています。
併設の「art café 夢二」では、そんな夢二の世界観を満喫できる市松模様の床やテキスタイルを用いた家具など、デザイナー水戸岡鋭治氏と夢二のデザインがコラボし、美しく造り込まれた空間が訪れる人を魅了します。そこは、お茶をのみながら作品をゆっくりと鑑賞するための場所。夢二が求めた「暮らしの中にある芸術」を体現したものです。
また、「黒の助の部屋」か中庭で黒猫を見かけたら、それは気まぐれで出勤しているお庭番ねこの「黑の助」。肉球もまっ黒な美術館のアイドルです。
なお、ここから車で東へ30分ほどの瀬戸内市にある「夢二生家記念館・少年山荘」でも、ふるさとをテーマに季節に合わせた作品を展示しています。
D
西大寺観音院
さいだいじかんのんいん
西大寺観音院は、およそ1200年の歴史を誇る真言宗の古刹です。ご本尊は十一面千手観音菩薩。西大寺という名前は、龍神から託されたサイの角をもって伽藍を建立したことから、「犀(さい)を戴く寺」で「犀戴寺(さいだいじ)」という名がつけられました。
現在の漢字は、後鳥羽上皇より賜ったものです。
日本三大奇祭で国の重要無形民俗文化財に指定されている「西大寺会陽」という裸祭りは、国内外で知られており、極寒の2月第3土曜日には、まわしを締めた約1万人の男たちが県下最大級の本堂に集結。
「宝木」と呼ばれる幸運の木片を巡りすさまじい争奪戦が繰り広げられます。
広い境内の見所は、大日如来を祀る三重塔や、国の重要文化財である朝鮮鐘(ちょうせんしょう )。荘厳な仁王門は、柱の上を見上げると、中備に十二支の彫刻が施されています。
竜宮城を髣髴とさせる石門は、正しくは龍鐘楼といい、1階が石造りで2階が木造という珍しい造りです。
また、ユニークな試みとして、春には「皆足姫」というイチゴが出回ります。
これは、西大寺の縁起に関わる藤原皆足姫にちなんだもので、地域限定のイチゴです。
E
最上稲荷(最上稲荷山妙教寺)
さいじょういなり(さいじょういなりさん みょうきょうじ)
最上稲荷の正式名称は、最上稲荷山妙教寺。江戸時代に入るまでは龍王山神宮寺といい、その創建は奈良時代まで遡る古刹です。
ここは仏教系でありながら、大鳥居や神社建築の本殿を構える珍しい寺院。「神仏習合」と呼ばれるこの形は、明治の神仏分離令でほとんど失われましたが、それまでの日本ではごく一般的な様式でした。
ご本尊は、最上位経王大菩薩(さいじょういきょうおうだいぼさつ)。通常、白狐に乗った女神の姿で描かれます。参拝にあたり特に作法は設けられていませんが、神社のように拍手(かしわで)は打たず、多くの方が手を合わせて静かにお参りされます。
境内の見所は、石造りの仁王門や江戸時代中期に再建された旧本殿。「縁の末社(えんのまっしゃ)」は、良縁を結ぶために悪縁を絶つべく、縁切りと縁結びの両方の神様が祀られています。
また、背後の龍王山を登れば、日蓮宗で唱える「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7文字が刻まれた題目岩(だいもくいわ)や、報恩大師(ほうおんだいし)が修行をしたという霊地・八畳岩(はちじょういわ)が続き、山全体が神聖な空気に包まれています。
F
吉備津神社
きびつじんじゃ
春の梅や牡丹、初夏は紫陽花、秋のイチョウなど、四季折々の彩りが美しい吉備津神社。創建は諸説ありますが、古代吉備国の時代からすでにあったと考えられています。
注目すべきは、その社殿。室町時代前期に再建された本殿は、山形の入母屋破風(いりもやはふ)をふたつ並べた大屋根が目を引きます。
出雲大社や八坂神社の本殿に匹敵する大きさで、随所に仏教建築の影響がみられる点も特徴。正面に接続する拝殿と合わせて国宝に指定されている見事な建築です。
本殿から南へ伸びる廻廊も見所のひとつ。自然の傾斜に合わせて一直線に続く大変優雅な造りです。
ご祭神は、吉備津彦命。この地を治めていた命が、温羅と呼ばれる鬼を退治したという伝説は、後に「桃太郎」の話のもとになったといわれています。
このため、西側に位置する御竈殿には、吉備津彦命に討たれた鬼の首が埋められていると伝わり、現在も釜の鳴る音で吉凶を占う「鳴釜神事」が行われています。
また、北側に祀られている「矢置岩」も鬼退治に由来するもので、正月には鬼の侵入を防ぐための儀式「矢立の神事」が執り行われます。
G
犬島
いぬじま
岡山県の南東に浮かぶ、人口50人に満たない小さな島、犬島。名前の由来は諸説ありますが、島の山頂に犬がうずくまったように見える巨大な石があったことから、犬石がある島―「犬島」になったという言い伝えがあります。
奈良時代から戦国時代にかけては、瀬戸内海きっての海賊の拠点として恐れられていたこの犬島は、江戸時代になると、「犬島みかげ」と呼ばれる花崗岩が採れることから、採石が盛んに行われるようになりました。
このため、島本来の地形は跡形もなく変わったといわれています。
明治に入ると採石業に続く製錬業で、近代産業の波に乗ったものの、やがてそれも著しく衰退。時を経た2008年、ベネッセコーポレーションによる「犬島アートプロジェクト」が起動し、犬島精錬所が美術館として生まれ変わりました。
また、過疎化し続ける集落の空き家を丸ごと利用した「家プロジェクト」も生まれ、現代アートの島として再生の道を歩み始めています。
H
招き猫美術館
まねきねこびじゅつかん
市内から離れた山の中、自然に囲まれた一角に佇む古民家が、「招き猫美術館」です。
築100年近い民家の屋根裏には、木彫り、石、焼物など多種多様な招き猫がずらり。初代館長が、これまで多くの人に幸を招き寄せてきた猫たちにもう一度居場所を与えるべく、国内外から集めた圧巻のコレクションです。
別館の「ラッキーキャッツハウス」では、予約不要の「絵付け体験」が人気。真っ白な素焼きの招き猫に思い思いの絵柄を描き、世界にひとつのオリジナル招き猫を作ります。
作業時間は1時間ほど。その場で持ち帰れる点も魅力です。
招き猫は、右手をあげていればお金、左手をあげていればお客を招くといわれ、白は「開運」、緑は「学力向上」など、色によっても意味が異なります。
懐かしい名作から新刊まで猫の絵本が揃う山猫文庫や、猫の現代アートもあり、「福」以上に得られるものがありそうです。
ちなみに、招き猫にも生産地があり、日本一の生産地は愛知県の常滑市。9月29日は「招き猫の日」です。
I
岡山のグルメ
おかやまのぐるめ
瀬戸内の穏やかな気候に恵まれた岡山県は、古代より農業・水産業が盛んな地域です。くだもの王国としても知られており、その代表であるマスカットは、明治時代にエジプトからもたらされ、国内で初めて栽培に成功したもの。甘くみずみずしい白桃も、実は岡山生まれです。
海の幸の代表は、鰆。漁獲量が少ない割りに、消費量は日本一。鰆が大好きな岡山県民のために全国から一級品が集まるため、「鰆の値段は岡山で決まる」といわれるほどです。
この鰆や旬の魚を使った岡山を代表する郷土料理といえば、岡山ばらずし。ママカリという小魚やタコもよく用いられます。
畜産のブランドは千屋牛。県北西部の新見市で育成している、非常に稀少な高級和牛です。
また、蒜山のジャージー牛も有名で、ジャージーヨーグルトは定評があります。
一方、愛すべき庶民の味は、おかやまデミカツ丼、えびめし、牡蠣入りのお好み焼き「日生カキオコ」などが名物。また、創業100年を越える老舗のパンメーカー「岡山木村屋」のパンも広く親しまれています。
なお、おみやげの定番といえば吉備団子ですが、大手まんぢゅうも人気です。