世界遺産となった合掌造り家屋が並ぶ
「白川郷」エリアの観光音声ガイド12選
白川郷エリア紹介
白川郷には、個性的な合掌造りを取り入れた家が並びそれらは世界遺産に指定されています。合掌造りは、積雪対策で屋根部分を三角形に組み合わせて荷重を分散させる建築様式で、合掌という言葉どおり手を合わせたようにも見える独特の形をしています。山間の風雪対策として同じ方向を向いた家屋が作り出す光景からは、ここでしか見ることのできない独特の風情が感じられます。この地域は周辺と隔絶された奥深い山里で田畑の耕地面積が狭いという難点がありましたが、合掌造り家屋には広い屋根裏空間があり、ここを活用した養蚕業(ようさんぎょう)が定着して貴重な現金収入をもたらしました。
また、秘密裏に床下で火縄銃の火薬の元を造り、幕府に卸すといった副業も行われていました。合掌集落は四季によって様々な顔を見せ、展望台からも全景を見ることができます。また1月から2月の夜には舞い散る雪がライトアップに映え、寒さを忘れ幻想的な雰囲気を楽しむ観光客で賑わっています。
A 明善寺郷土館
B 和田家
C 長瀬家
D 旧遠山家民俗館
E 神田家
F 白川郷 田島家養蚕展示館
G 荻町城跡展望台
H 焔仁美術館
I 天守閣展望台
J 白川八幡神社
A
明善寺郷土館
みょうぜんじきょうどかん
明善寺郷土館は、郷土の民具などを展示する資料館です。建物は1817年頃に高山の有名な大工 山村与四郎によって建てられた合掌造りです。高さはこの地区では最も高い15メートルの5階建てで、釘などを一切使わずに建築されたことから、重要文化財に指定されています。特徴は、客間に「出居(でい)」と呼ばれる座敷が作られていることです。さらに普通の「出居」と「口の出居」「奥の出居」と3室も用意されていることから、訪問者が多かったことが伺えます。
公開されている郷土の民具として、炊事用具や農具、木工家具があり、合掌造りでの当時の暮らしぶりに思いを馳せることができます。特に炊飯用の黒い釜や、蒸すためのせいろなど、日々使われていたであろう道具類が極めて良い保存状態で残されています。また、建物内部の上階から1階を見下ろすことができ、囲炉裏を含めた全景は当時の家族の団らんなど日本の懐かしい風情を感じ取ることができます。
B
和田家
わだけ
和田家は江戸時代中期に建てられた白川郷最大規模の合掌造りです。築300年の家屋ですが、保存状態もよく、玄関は式台付きで格式の高い家屋です。1995年に国の重要文化財に指定されました。また60度近い急傾斜の茅葺(かやぶき)屋根は、屋根裏部屋が広く、このスペースを利用して江戸時代から養蚕棚を設置していたそうです。2階には現在あまり目にすることがない養蚕の道具を多く展示しています。和田家は庄屋や牛首口の番所役人として勤める傍ら、白川郷では欠かすことのできない収入源となっていた焰硝(えんしょう)の取引によって栄えていたといわれています。
C
長瀬家
ながせけ
長瀬家は、荻町最大級の合掌造り家屋です。1890年に着工し、3年がかりで完成した5階建ての合掌造りの一本柱は約11メートルもあり、屋根の勾配の上から下までを貫いているのが特徴です。長瀬家は250年続いている古い家柄で、『ものを愛する心が宝もの』という家訓があり、初代から三代目までが医者という家系でした。そのため、江戸時代に使われた医療器具も展示されています。
合掌造り家屋での屋根の葺き替えは一大イベントです。かつては50年単位で、「結(ゆい)」と呼ばれる住民同士の助け合いによる共同作業で行われていたと伝えられています。長瀬家では2001年に80年ぶりに実施され、4トントラック10台分の茅が使われました。地域住民だけでなく500人のボランティアが現代の「結」となり、個々の絆や相互扶助の大切さを確かめ合える機会となりました。葺き替えられた屋根が囲炉裏の煙で燻されることで、抗菌・防虫効果が高まり、500年前に作られた仏壇や漆器などが守られ後世へ伝えられていくことが期待されています。
D
旧遠山家民俗館
きゅうとおやまけみんぞくかん
旧遠山家民俗館は、白川村の衣食住に関する資料が展示されている資料館です。建物は、1827年頃に能登の大工によって建てられた4層建ての合掌造り家屋で、完成から190年以上たった今も、屋内の柱は光沢を放ち、苔むした外観はしっとりとした素朴な印象を与える造りとなっています。
この遠山家に限らず、白川村は農耕のできる土地が少ないことから、次男や三男は分家として独立しにくい土地柄です。そのため、長男を頂点とした大家族形態の家族構成になり、その人数は一家族で20人を超えることもあるといわれています。最も面積が広い1階は生活空間となります。空間的な制約から次男や三男は結婚して嫁を迎えることができず、通い婚のような不自由さを強いられたうえ、子どもたちは内縁関係の女性の家で引き取って育てていくという、独特の暮らしぶりが続いていました。今でこそ、囲炉裏の回りに用意された座布団に座って、のんびりとした静かな時間を過ごせますが、当時の家の中は混沌としていたとも言われています。
E
神田家
かんだけ
神田家は、江戸時代後期に建てられた合掌造り家屋の見学施設です。神田家は和田家の次男である和田佐治衛門が分家し、この地に居を構えたのが始まりです。白川村は土地が少ないため分家するのは容易ではなく、極めてまれな分家の例です。和田家の次男ではありますが、この地に産土八幡宮(うぶすなはちまんぐう)の「神田(しんでん)」があったことから分家と同時に神田(かんだ)と性を改めました。神田家の合掌造りは、江戸後期に石川県の宮大工によって十年の歳月をかけて建てられました。太さが60センチメートルもの松の木の梁が見事です。大家族に対応するために中2階が作られているところが特徴的です。使用人や独身兄弟などが中2階で寝起きをしたと考えられていますが、火災にならないように1階の囲炉裏の火を監視する小窓も作られています。こうした工夫が施されたことで、1階の囲炉裏はいまだ現役で火が絶やされることがありません。囲炉裏で沸かしたお湯で入れた「野草茶(やそうちゃ)」をいただくこともできます。
F
白川郷 田島家養蚕展示館
しらかわごう たじまけようさんてんじかん
白川村は山間の狭く痩せた耕作地で、冬は積雪が数メートルにもなる豪雪地帯のため、かつては養蚕業が貴重な現金収入源でした。今では行われなくなった養蚕業にまつわる資料を唯一展示しているのが旧田島家合掌造りの家屋です。白川村の繭は良質で、京都西陣織にも使用されるほどその価値は認められ、高値で取引されていました。合掌造りの家屋は、その構造的な特徴を生かして上の階を養蚕に利用していました。展示館内部は幾重にも巻いた縄で固定された屋根裏を再現し、実際に使っていた道具などが展示されていて当時の雰囲気が伝わってきます。さらに貴重な昔懐かしい映像資料の放映もあり、来館者が理解しやすいようになっています。白川郷では将来に向けての養蚕復活プロジェクトを発足し、その一環として実際に蚕の飼育を行い、時期によっては蚕が桑の葉を食べるところなどを公開しています。
G
荻町城跡展望台
おぎまちしろあとてんぼうだい
荻町城跡展望台は、荻町城跡にある白川郷の合掌造り家屋を一望できる展望台です。荻町城がいつ築かれたかは不明ですが、付近には1462年頃に築城された帰雲城(かえりくもじょう)があったことは分かっています。元々荻町城は、天守閣があるようなそびえ立つお城ではなかったので、荒廃してからは土塁と小規模な掘の跡が残っている程度です。見た目は眺望の良い山の上という印象で、お城があった所とはあまり感じられませんが、ここからの景色はまるで民話の世界を思い起こさせ日本の原風景とも言えるでしょう。合掌集落とあわせて新緑・紅葉・雪景色を一望することもでき、撮影スポットとしても人気です。
H
焔仁美術館
ほむらじんびじゅつかん
合掌造りの焔仁(ほむらじん)美術館は、大胆な色使いで作品テーマと社会状況との接点を感じさせるような現代アートで知られる「焔仁」の作品を、約50点展示している美術館です。白川郷に約20年間アトリエを構えて創作活動を行った焔仁が、建物と作品を村に寄贈したことによって開館しました。この美術館の特徴は、地域独特の合掌造りと斬新な現代アートのコントラストです。焔仁の作品は、燃え出すような立体的かつ躍動感あるタッチが特徴ですが、そうした作品が合掌造りの家屋で生み出されたというのが興味深いところです。1948年、静岡県に生まれた焔仁は、パリ大学に留学してアートの世界に触れ、その後コペンハーゲンなどで個展を開催してきました。2002年には自らが発起人となった初めての白川郷芸術祭を開催。その後このイベントは世界文化遺産に指定され、グローバルな芸術祭として定期的に開催されるようになりました。素朴な雰囲気の合掌造りの美術館ですが、そこで生まれた情熱的な焔仁の作品を鑑賞できる貴重な場所です。
I
天守閣展望台
てんしゅかくてんぼうだい
天守閣展望台は、合掌造りの家が並ぶ白川郷の集落にある展望台です。荻町集落を一望できる「天守閣」という食事処の敷地内にありますが、食事をしなくても展望台へ行くことができます。ここから見える風景は、白川郷荻町合掌集落を含めた白川郷を俯瞰するような図柄で、パンフレットやガイドブックでもおなじみの景色です。合掌造りの家屋が、風雪のダメージを避けるために同じ方向を向いて建っているところが特徴です。また雪下ろしをしなくて済むように、急傾斜の屋根を持った家屋が並ぶ風景も白川郷ならではのものです。特に1月から2月の雪が舞う時期に行われる夜のライトアップの景色は美しく、かつては厳しい生活の場であった白川郷が、まるでおとぎ話の世界にいるような幻想的な雰囲気に一転し、多くの観光客を魅了します。
J
白川八幡神社
しらかわはちまんじんじゃ
白川八幡神社は、合掌造り集落から少し奥に位置したところにある神社です。創建は700年代初頭と伝えられています。どぶろくを奉納するほか、岐阜県無形民俗文化財に指定されている「白川村の獅子舞」や「白川村の春駒踊り」も奉納されます。境内には村指定の天然記念物にされている大きな杉があり、神聖な雰囲気が味わえます。高さ30メートル、幹の周囲は5.6メートル、樹齢は200年から300年といわれており、鳥居の左側にそびえるその姿はとても荘厳です。
また、白川八幡神社はアニメに出てくる神社のモデルにもなった場所としても知られています。神社内にはそのアニメ作品に関連するイラストが描かれた絵馬が圧倒的に多く、訪れるファンの多さを物語っています。